店舗設計で「席数を増やす」と運営が苦しくなるケース

店舗設計の相談でよくあるのが「席数をできるだけ増やしたい」という要望です。

売上は席数に比例しそうに見えますし、家賃や固定費を考えると、少しでも席を増やしたくなる気持ちは自然です。

ただ実際の現場では、席数を詰めたことでオープン後に運営が苦しくなり、結局レイアウトを直すケースが少なくありません。

席数を増やす判断そのものが悪いわけではなく、増やし方と優先順位を間違えると、店舗の体力が削られていくという話です。

この記事では、店舗内装工事に強い施工会社の目線で「席数を増やしたら詰むパターン」と「増やすならここまで整える」という考え方を整理します。

店舗 設計の失敗を避けたい方の基礎資料として使える内容にしています。

席数を増やすと何が起きるのか

席数を増やすと、客席が増えるだけでは済みません。

同時に増えるのは、人の動き、音、熱、荷物、汚れ、待ち時間、スタッフの負担です。

この増え方が“店舗の許容量”を超えた瞬間に、運営のしんどさが表に出ます。

例えばカフェで席を4席増やした場合、ピーク時の注文が増え、提供が遅れ、回転が落ち、クレームが増えます。

美容室ならセット面を1台増やしただけで、シャンプー待ちが発生し、予約枠が崩れます。

飲食店なら席はあるのに厨房が回らず、料理が出ないことで客単価も満足度も落ちます。

席数は売上の“入口”ではありますが、同じだけ出口である提供能力や回転やオペレーションも整っていないと、むしろ売上が下がることが起きます。

席数を詰めて運営が苦しくなる典型パターン

ここからは、実際に工事後の修正相談が出やすいパターンをまとめます。

難しい専門の話ではなく、開業後に現場で困ることに絞ります。

通路が細くなりスタッフの動きが止まる

席を詰めると、通路が細くなります。

細い通路は、スタッフがすれ違えない、料理を運べない、清掃がしにくい、ぶつかりやすいという形で効いてきます。

混雑時に一度詰まると、提供が遅れ、片付けも遅れ、席が空いていても回転しない状態になります。

設計段階では「通れますよね」で済ませがちですが、実際はトレーを持った人が通る、後ろを通る、すれ違う、声をかける、避けるという動作が連続します。

通路が細い店は、スタッフが疲れ、ミスが増え、最終的に人が定着しにくくなります。

厨房やバックヤードの容量が追いつかない

席数を増やすと、注文数が増えます。

しかし厨房の作業スペース、冷蔵冷凍の容量、盛り付けの場所、洗い場の動線がそのままだと、ピークで崩れます。

結果として提供時間が延び、待ちが発生し、回転が落ちます。

席数を増やすときに一番先に確認したいのは、客席ではなく厨房側の“処理能力”です。

席が増えたのに売上が伸びない店舗の多くは、厨房側がボトルネックになっています。

トイレや手洗いの使い勝手が悪くなる

席数が増えると、トイレの利用回数も増えます。

行列ができる、清掃が追いつかない、臭いが気になる、手洗いが狭いといった不満が出やすくなります。

特に飲食店は、トイレの印象が店全体の評価に直結します。

客席を増やして売上を上げたいなら、トイレを“削る対象”にしない方が結果的に強いです。

音と距離の問題で落ち着かない店になる

席を詰めると、隣の会話が気になる、イスを引く音が響く、店内が騒がしいと感じやすくなります。

落ち着きたい業態ほど、これが致命傷になります。

回転が上がるどころか、滞在が短くなり、リピートが落ちることもあります。

この問題は、デザインの雰囲気を整えても解決しにくく、席の距離感と素材の選び方が大きく影響します。

店舗 デザインと店舗 設計は別物ではなく、運営に効く形でバランスさせる必要があります。

空調や換気が追いつかない

席数が増えると、人の熱、湿気、二酸化炭素が増えます。

エアコンは効いているのに暑い、匂いがこもる、冬に足元だけ寒い、こういう不満が増えます。

空調や換気は、開業後に直すと費用も工期も重くなりがちな部分です。

席数を増やす判断をするなら、設備側の余裕もセットで見ておきたいところです。

席数を増やしても強い店になるための考え方

席数を増やすこと自体を否定する話ではありません。

大事なのは、席数を増やす目的と、増やした後の運営を支える条件を先に揃えることです。

ここでおすすめなのは「席数」ではなく、先に3つの軸を決めることです。

売り方の軸

客単価を取るのか、回転で取るのか、滞在で取るのか。

この軸が決まらないまま席数だけ増やすと、設計が中途半端になりやすいです。

ピークの捌き方

ピーク時に何人で回すのか。

スタッフ人数に対して動線が合っているか。

ここが設計に落ちると、席数が増えても運営が崩れにくくなります。

提供能力

厨房やバックヤードの容量が、ピークを捌けるだけあるか。

席数と厨房の関係がズレると、店はずっと苦しくなります。

この3つが揃った上で、席数を詰めるのか、席を減らして単価を上げるのか、席の種類を変えるのかという判断に入るのが強い順番です。

施工前にチェックしておくと失敗が減る項目

ここだけは、開業前に一度整理しておくと効果が大きいです。

箇条書きは最小限にします。

・ピーク時のスタッフ人数と、その時の動き方

・厨房、バックヤード、ストックの容量が足りるか

・通路でスタッフがすれ違えるか、片付けが回るか

・トイレと手洗いの使い勝手、清掃のしやすさ

・空調換気の余裕があるか、臭いや熱が溜まらないか

この確認ができると、席数の増減が“数字の話”から“運営の話”になり、判断がブレにくくなります。

席数を増やすなら「増やし方」を工夫する

席を増やす方法は、詰め込む以外にもあります。

例えば、席の種類を変える、回転が上がる導線にする、バックヤードの使い方を見直すなど、運営がラクになる方向の増やし方があります。

詰め込み型で席を増やすと、オープン直後からスタッフが疲れます。

疲れはミスに繋がり、ミスはクレームや離職に繋がり、最終的に売上に響きます。

最初から“続けやすさ”を含めた店舗設計にしておくと、開業後の修正工事が減り、結果的にコストも抑えやすくなります。

まとめ

店舗設計で席数を増やす判断は、売上に直結しそうに見えて、運営の苦しさも同時に増やすリスクがあります。

通路、厨房、トイレ、音、空調換気など、席の周辺条件が追いつかないと、席があるのに回らない店になりやすいです。

逆に、売り方、ピークの捌き方、提供能力を先に整理してから席数を決めると、増やしても強い店にしやすくなります。

仙杜工務店では、店舗内装工事に特化した工務店として、デザインの方向性と運営のしやすさを両立させた店舗設計と施工計画をご提案しています。

席数を増やしたい、でも詰め込みで失敗したくないという段階でも構いません。

物件資料が揃っていなくても、想定業態と開業スケジュールから、優先順位の整理と進め方を一緒に組み立てていきます。

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